人材重視の企業経営
DMG顧問 山田武

通販企業に関わらず、企業全体にとって筆頭に上げられる課題である人材育成と組織運営。
特に人材育成においては、人材を単なる資源としてではなく資産としてきちんとした考え方に基づいた社員の獲得・育成から配置・評価・処遇まで行う「人材マネジメント」が不可欠です。
人材価値の蓄積と活用にかかわる企業の経営機能そして商いの本質とは何かを、長年企業労務全般に携わり多く通販企業の経営顧問として現在も活躍される山田武氏に人材をテーマに企業経営論を学びます。
<第一章> 企業経営はバランスが大切
近年の市場において、人の生命を守り健康を維持すべき食の安全・安心を脅かす報道が相次いでいます。生活者の信頼を失い、目先の利益のみを追ったこうした悪どい企業活動が厳しい指弾を受ける行為を聞くたびに「築城3年・落城3日」の古言が甦ってまいります。
江戸時代中期に京都で多くの信奉者を集めていた石田梅岩は“3分の利”を提唱し、目先の利のみを追うのは商人にあらず、“買い手の利、売り手の利、世間の利、この三つを成り立たせてこそ正しい商い(ビジネス)の道である”と説かれています。
こうした商い(ビジネス)の本源を忘れ、目先の企業利益を追うのみでは、ゴーイングコンサーン(継続事業体)といわれる企業の継続した存続など有り得るはずはありません。
企業の存続使命は、お客様のお役に立ち、「使って良かった」と満足頂ける商品とサービスの提供によって、初めて自社の収益を得ることができ、社会の経済活動に寄与することになります。こうした循環活動によって社会及びお客様の信用・信認が得られ、継続事業体としての基盤が確立するといえるのです。企業トップが心しなければならないことは、経営機能のバランスある整備と充実を最重視することです。
そのためのステップとして@人材育成A商品政策Bマーケティング戦略Cシステム構築D財務戦略といったペンタゴン型の経営形態の確立と充実が必要となってきます。
@人材育成戦略
戦国時代の武田信玄は『人は城 人は石垣 人は壕』と、人材こそを国を守る基礎との信念から、生涯城を持たず有名な24武将を招致或いは育て上げた、武田軍団の勇猛果敢さは全国に恐れられる存在となっていました。
また、第二次世界大戦時の連合艦隊司令官であった山本五十六元帥もかの有名な『やって見せ 言って聞かせて やらせて見せて 褒めてやらねば人は動かじ』との言葉を残しています。
企業集団にとりましても、人材の重要度に変わりはありません。『平凡な集団が非凡な結果を築く』これこそが企業経営者の醍醐味であり、そのための人材育成戦略が重視される所以となります。まず『要員採用』から始まり『基礎研修』『適正配置』『研修・訓練(OJT)』『評価』『処遇・昇給』と、能力アップ・スパイラルを描きつつ戦力化を進めなければ烏合の集団となりかねないのです。
『要員採用』
中途&新卒採用に拘らず、面接時のポイントは素直・謙虚・明朗さを持ち明るく快活な話し方を重視し、社会規範に対する認識度の有無を確認します。最後役員(トップ)面接では、その企業の創業理念や商品またはサービスを通じて如何に社会貢献を果たしているか、被面接者に何を期待し役割をどう果たして欲しいかを熱く語り、企業で苦楽を重ねていきたいとの共感度と期待そして意欲を高めることが大事なことです。なお、要員不足で妥協した採用は決して企業の将来にとってプラスにならないことを肝に銘じていただきたいものです。
『基礎研修』
企業の事業内容、経営理念、経営者(または創業者)の事業に対する信念&想い、経営方針、事業目標、取扱い品目、組織&機構、経営陣程度はきっちりと説明してください。できればどの採用者にも同じ理解を得られるようマニュアルにまとめておく方が良いでしょう。
『適正配置』
適正配置という言葉以上に配置は難しいことですが、一番良いのは短期間の間にライン部門を順番に経験させ、その姿勢・態度を見た上で最初の配置部門を決めることでしょう。要は採用時のモチベーションを落とすことなく職場環境になじみ、業務手順に従って正しい処理ができるように指導者が見守っていくことが大切になります。
『研修・訓練』
仕事を通じての訓練(OJT)が中心となります。何より重要なことは本人の自己啓発意欲を高めながら仕事の対応力を向上させ、仕事の熟練度を上げることに集中できる職場環境(先輩&同僚との人間関係や資料類の整備及び事務処理ツールの充実)を可能な限り整えていくことも大切です。当人のモチベーションを常に高めながら、仕事の結果を温かく見守る指導者の重要性を認識して、OJTに励んで頂きたいものです。
『評価』
人は周囲から『認められる喜びと、褒められる喜び』を得ることによって、より意欲が高まるものです。昇給・昇格期や賞与時に自分の働きがどのように評価されるのかに重大な関心を持つことは当然のことでしょう。
できれば評価内容はオープンにし、多面評価(=上長評価と自己評価を同時に行う)を実施し、評価結果を率直に本人に伝え、次期の成長目標を一緒に創り、共に達成を目指した行動基準を設定します。評価項目は@業績貢献度A能力成長度B業務態度に分けます。当然、部門によっては評価項目の度合いに違いが出てくるでしょう。一般に部門責任者や指導者は@、一般社員ではAのウエイトが高くなりますが、自社の事業の内容や目標統合度に応じた設定を行っていただければよいと考えます。
なお、早い時期にBの基礎となる『報・連・相』の実行、5W+1Hの実践、事前・中間・事後確認の励行、規則・規範の遵守を徹底して身につけさせることが大切なことになります。
『処遇・昇給』
不適切または誤った処遇や昇給は職場の雰囲気を悪くさせるばかりでなく、企業風土が欠落する問題もはらみます。常に公平さを心掛け、単に辞令と告示だけですませるのではなく、全員に説明する機会を持ちたいものです。
人は『自分に甘く他人には厳しい』といった悲しい部分を抱いていることを心に銘じた対応を進めてください。なお、人は新しい環境に順応し成長する場合もありますから、積極的にチャレンジできる場を与えていくことも必要なことでしょう。
人材=人財と言われ、『企業は人なり』の格言を表した人事&労務管理をより充実させ、企業の安定と成長の起爆剤となり得る人材の確保と育成を、基本構想に盛り込まれることを願っております。
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